採用単価を下げようとすると、多くの会社が媒体費の値下げ交渉から入ります。ところが効果は数万円で止まり、翌年また同じ悩みに戻ります。採用単価は「どこにいくら払っているか」ではなく「1人採るまでに何人必要か」で決まるため、打ち手の順番を間違えると労力に対する見返りが小さくなります。この記事では効果の大きい4つの打ち手を並べ、それぞれ何円下がるかを計算式と具体的な数字で試算します。
- 採用単価を構成している費用の内訳
- 効果の大きい4つの打ち手と優先順位
- チャネル入れ替えの削減額の試算
- 歩留まり改善が単価に効く仕組み
- 削減額を出す3つの計算式
- 下げてはいけない費用
採用単価は何でできているか
まず計算式を確認します。
採用単価 = 採用にかけた総費用 ÷ 採用人数
分母と分子の両方に手が入れられます。分子を削る(費用を減らす)だけでなく、分母を増やす(同じ費用で採用数を増やす)ほうが効く場合も多くあります。
| 区分 | 費用項目 | 目安 |
|---|---|---|
| 外部費用 | 人材紹介の手数料 | 理論年収の30〜35%(年収400万円で120〜140万円) |
| 求人媒体の掲載費 | 月2〜20万円 | |
| スカウト媒体の利用料 | 月3〜15万円 | |
| 採用LP・採用サイト | 年15〜100万円 | |
| 内部費用 | 人事担当の工数 | 月20〜60時間(時給換算2,500円で月5〜15万円) |
| 面接官の工数 | 1候補者あたり2〜4時間 | |
| リファラルの報奨金 | 1名5〜30万円 |
多くの会社で単価を押し上げている最大の項目は人材紹介の手数料です。ここに手を入れずに媒体費を削っても、全体はほとんど動きません。まず自社の内訳を出すところから始めてください。項目の洗い出しは採用予算の立て方|チャネル配分と費用対効果から決める考え方、チャネルごとの計算方法は採用チャネル別コストの計算方法|媒体・紹介・リファラルを比べる、応募単価との違いは応募単価と採用単価の計算方法|改善の優先順位を10分でを参照してください。
4つの打ち手と優先順位
採用単価を下げる打ち手は大きく4つです。削減インパクト・着手の難しさ・効果が出るまでの期間で並べます。

インパクトが大きい打ち手ほど時間がかかる。並行して進める
| 打ち手 | 削減インパクト | 難易度 | 効果が出るまで |
|---|---|---|---|
| ① チャネルの入れ替え | 大(数十〜百万円) | 中 | 3〜6か月 |
| ② 歩留まりの改善 | 大(数十万円) | 中 | 1〜3か月 |
| ③ リファラル比率を上げる | 中(1名あたり100万円前後) | 高 | 6か月〜 |
| ④ 採用工数の削減 | 小〜中(年数十万円) | 低 | 即日〜1か月 |
着手の順番
インパクトの大きい①②から着手するのが基本ですが、どちらも効果が出るまで数か月かかります。その間の手応えを作るために、難易度が低く即効性のある④を並行して進めます。③は社内文化の醸成が必要で最も時間がかかるため、①②が回り始めてから取り組む順番が現実的です。
打ち手1:チャネルを入れ替える
最も効くのは、人材紹介で採っていた枠を自社応募に置き換えることです。手数料そのものが消えるため、削減額が桁で変わります。
削減額 = 置き換えた人数 × 紹介手数料の単価 − 代替チャネルの年間費用
試算例
年3名を人材紹介で採用している会社(平均年収400万円・手数料30%)を想定します。
| 構成 | 年間費用 | 採用単価 | 削減額 |
|---|---|---|---|
| 現状:紹介3名 | 360万円 | 120万円 | — |
| 紹介2名+自社1名 | 240万+60万=300万円 | 100万円 | 60万円 |
| 紹介1名+自社2名 | 120万+60万=180万円 | 60万円 | 180万円 |
| 自社3名 | 60万円 | 20万円 | 300万円 |
※自社応募の年間費用60万円は、採用LP・求人媒体・ドメイン等の合計を想定しています。
一気に置き換えないこと
表の下段が魅力的に見えますが、紹介をゼロにすると採用数そのものが落ちるリスクがあります。自社応募で1名採れる実績を作ってから次の1枠を置き換える、という順番で進めてください。1年で全部を切り替えるより、2〜3年かけて比率を動かすほうが安全です。
自社応募の入口を作るコストは採用LPの費用相場|制作方法別の料金と費用対効果の出し方で試算できます。どのチャネルに置き換えるかの判断は採用チャネルの選び方|職種・予算・ターゲットで組み合わせを決める、紹介依存から抜ける段取りは採用の内製化|紹介会社依存から自走できる採用体制の作り方を参照してください。
💡 紹介依存を下げるには、自社に応募が来る入口が必要です。HirePageは初期費用0円・月額49,800円(税別)で採用LPの制作から改善までを担います。
打ち手2:歩留まりを改善する
費用を1円も削らずに単価を下げられるのが歩留まり改善です。同じ応募数からより多く採用できれば、分母が増えて単価が下がります。
必要応募数 = 採用人数 ÷ 全体通過率
試算例
書類通過率20%・面接通過率50%・内定承諾率60%の会社が3名採用する場合、全体通過率は0.2×0.5×0.6=6%です。必要応募数は3÷0.06=50件になります。
| 改善する箇所 | 全体通過率 | 必要応募数 | 応募単価1.5万円での削減額 |
|---|---|---|---|
| 現状 | 6.0% | 50件 | — |
| 書類通過を30%に | 9.0% | 34件 | 24万円 |
| 承諾率を80%に | 8.0% | 38件 | 18万円 |
| 両方を改善 | 12.0% | 25件 | 38万円 |
どこを直すか決める
通過率の低い段階を全部直そうとすると手が回りません。業界の目安と比べて外れている段階を1つ選びます。目安の数値は中途採用の通過率の目安|応募・面接・内定の実データで比べる、詰まりの見つけ方は採用の歩留まり改善|7ステップで詰まりを見つける方法にまとめています。
段階別の数字の出し方は採用ファネル分析の進め方|どの段階で離脱しているか可視化すると面接通過率の分析|段階別と面接官別の合否データの見方を、承諾率の改善は内定辞退率の平均と計算方法|辞退が起きるタイミング別の対策を参照してください。
打ち手3・4:リファラルと工数
打ち手3:リファラル比率を上げる
社員紹介で1名採れれば、紹介手数料120万円が報奨金20万円前後に置き換わります。1名あたり100万円前後の削減になり、単価インパクトは大きいです。
ただし制度を作っただけでは紹介は出てきません。誰に何を渡せば社員が動くのかはリファラル採用の始め方を、退職者に声をかける経路はアルムナイ採用の始め方|出戻り社員を戦力にする設計を参照してください。年単位で取り組むテーマなので、①②と並行して仕込みます。
打ち手4:採用工数を削る
内部費用は見えにくいため放置されがちです。人事担当が月40時間を採用に使っているなら、時給2,500円換算で月10万円、年120万円が採用単価に乗っています。ここを2割削れば年24万円の削減です。
削る手順は、まず何にどれだけ時間を使っているかを書き出すところからです。詳細は採用業務の棚卸しから始める|削る・任せる・残すの判断、定型作業をAIに寄せる方法は採用業務のAI活用|求人・スカウト・返信を効率化する実例にまとめています。
🔧 工数を削る打ち手は、削った後に誰が回すかを決めないと元に戻ります。LoopOpsは媒体運用・スカウト・候補者対応のうち必要な範囲だけを切り出して引き受けます。
下げてはいけない費用
単価を下げること自体が目的になると、かえって高くつく削り方をしてしまいます。
定着に効く費用
採用単価を下げても、入社した人が3か月で辞めれば単価は実質2倍になります。オンボーディングや初期研修の費用は、単価を計算する分母を守るための投資です。定着まで含めた採用コストの見方は採用コストの判断基準|手数料と離職率から定着込みで見るを参照してください。
候補者体験に直結する費用
面接の交通費支給をやめる、選考回数を増やして候補者の負担を増やす、といった削り方は承諾率を下げます。分母が減るため、削った額以上に単価が上がります。
数字を見る仕組みの費用
計測をやめると、そもそも単価が下がったかどうかが分からなくなります。効果測定の設計は採用の費用対効果を測る|採用ROIの計算方法と改善の優先順位を参照してください。
よくある質問
Q. 人材紹介の手数料は値下げ交渉できますか。
可能な場合はありますが、30%から25%程度が現実的な範囲です。年収400万円なら20万円の削減で、自社応募に1枠置き換えたときの効果(120万円)とは桁が違います。交渉に時間をかけるより、複数社に依頼して実績のある1〜2社に絞り、並行して自社応募の枠を作るほうが効きます。返金規定(早期退職時の返金割合と期間)を確認しておくことも、実質的なコスト削減になります。
Q. どのくらいの期間で採用単価は下がりますか。
工数削減は1か月以内に効果が出ます。歩留まり改善は選考が1周する1〜3か月、チャネル入れ替えは自社応募が立ち上がるまで3〜6か月が目安です。リファラルは半年から1年かかります。四半期ごとに採用単価を計算して推移を見るのが現実的なサイクルです。単月では採用人数のばらつきで数字が跳ねるため、3か月移動平均で見ることをおすすめします。
Q. 採用人数が年1〜2名だと、打ち手を打つ意味は薄いですか。
むしろ効果は大きくなります。年1名を人材紹介で採っている会社が自社応募に置き換えれば、120万円が年60万円のLP費用に変わり、初年度で60万円の削減です。人数が少ないほど1名分の手数料が全体に占める比率が高いため、1枠の置き換えが単価に直接跳ね返ります。ただし採れなくなるリスクも同時に大きいので、紹介と並行して自社応募を走らせる形から始めてください。
採用単価の見直しについてご相談がある方は、下からご連絡ください。