「うちの採用の通過率は、高いのか低いのか」——この問いに答えるには、自社の数字だけを見ていても分かりません。応募から内定までの通過率が良いか悪いかは、業界の平均という「ものさし」と比べて初めて判断できます。自社の面接通過率が30%だったとして、それが優秀なのか課題なのかは、比較対象がなければ評価できないからです。この記事では、マイナビの最新調査で明らかになった中途採用の実データ(求職者側の応募・面接・内定の平均件数)を手がかりに、企業側の選考通過率の目安と、自社の数字と比べる方法を解説します。
- 通過率は「基準」がないと評価できない理由
- 求職者側の応募・面接・内定の実データ
- 企業側の選考通過率の目安
- 自社の数字と比較する方法
- 目安から外れているときの見方
- 通過率を改善する打ち手
通過率は基準がないと評価できない
採用の通過率を計測している企業は増えていますが、「その数字が良いのか悪いのか」を判断できている企業は多くありません。理由は、比較対象となる基準を持っていないからです。
数字だけでは判断できない例
たとえば、書類選考の通過率が20%だったとします。この数字は、次のどちらの状況でも同じ「20%」です。
- ケースA:応募が殺到していて、厳選できている(健全)
- ケースB:要件に合わない応募ばかり集まっている(母集団の質に課題)
同じ20%でも、意味はまったく異なります。数字を評価するには、業界平均という基準と、自社の他の数字との関係の両方を見る必要があります。
基準となる2つのものさし
- 外部の基準(業界平均):他社と比べて自社はどうか
- 内部の基準(自社の推移):過去の自社と比べてどう変化したか
この記事では主に「外部の基準」を扱います。自社内での計測方法は採用ファネル分析の進め方|どの段階で離脱しているか可視化するを参照してください。
求職者側の実データ
企業側の通過率を考える前に、求職者が実際にどれだけの企業に応募し、面接を受け、内定を得ているかを見ておきます。これは通過率を読み解く前提になります。
マイナビ「中途採用・転職総括レポート2026年版(2025年実績)」によると、転職活動を行った求職者の平均は次の通りです。詳細はマイナビキャリアリサーチLab「中途採用・転職 総括レポート2026年版(2025年実績)」を参照してください。
| 求職者の行動(平均) | 件数 |
|---|---|
| 応募数 | 平均13.6件 |
| 面接数 | 平均3.8件 |
| 内定獲得数 | 平均2.3件 |
この数字が企業側に意味すること
求職者は平均13.6社に応募し、そのうち3.8社の面接に進み、2.3社から内定を得ています。つまり、内定を出しても、その候補者は平均でもう1社以上から内定を持っているということです。これは、内定辞退が起きやすい構造を示しています。
求職者が複数の内定を持つのが当たり前という前提に立つと、企業側は「内定を出したら終わり」ではなく、「内定後にどう選んでもらうか」まで設計する必要があります。内定辞退率の考え方は内定辞退率の平均と計算方法|辞退が起きるタイミング別の対策を参照してください。
企業側の選考通過率の目安
企業側の選考通過率は、業界・職種・採用手法によって大きく異なります。ここで示すのはあくまで一般的な目安であり、自社の数字を評価する出発点として使ってください。

各段階の通過率は目安。自社の数字と比較する出発点として使う
選考ファネル各段階の通過率の目安
| 段階 | 通過率の一般的な目安 |
|---|---|
| 応募→書類選考通過 | 30〜50% |
| 書類通過→1次面接通過 | 40〜60% |
| 1次面接→最終面接通過 | 40〜60% |
| 最終面接→内定 | 50〜70% |
| 内定→承諾 | 50〜70% |
※上記は一般的な目安であり、業界・職種・採用手法・母集団の質により大きく変動します。スカウト経由は応募通過率が高く、求人媒体経由は低くなる傾向があります。
応募から内定までの全体通過率
各段階を掛け合わせると、応募から内定までの全体通過率は、おおよそ数%〜10%程度になります。100人が応募して、最終的に内定に至るのは数人という水準です。この全体像を把握しておくと、「何人採るには何人の応募が必要か」を逆算できます。逆算の方法はKPI設定の考え方とあわせて採用KPIの設定方法|目標値と計測サイクルの決め方を参照してください。
🔧 自社の通過率を段階別に可視化し、業界目安と比較しながら改善する運用はLoopOpsへ。数字の集計から打ち手の実行まで伴走支援します。
自社の数字と比較する方法
目安が分かったら、自社の数字を計算して比較します。手順はシンプルです。
ステップ①:各段階の人数を数える
直近3〜6か月の採用データから、各段階の人数を数えます。応募者数・書類通過者数・各面接の通過者数・内定者数・承諾者数を、募集ポジションごとに集計します。
ステップ②:段階ごとの通過率を計算する
通過率=(通過した人数)÷(その段階に進んだ人数)で計算します。たとえば書類選考の通過率は、書類通過者数÷応募者数です。
ステップ③:目安と照らし合わせる
計算した自社の通過率を、前章の目安と並べます。目安より高い段階・低い段階を確認します。
| 段階 | 自社 | 目安 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 書類通過 | 15% | 30〜50% | 低い(要確認) |
| 1次面接通過 | 50% | 40〜60% | 目安内 |
| 内定承諾 | 40% | 50〜70% | 低い(要確認) |
この例では、書類通過率と内定承諾率が目安より低く、改善の余地があると分かります。データ収集の運用は採用管理表の作り方|Googleスプレッドシートで進捗を一元管理するを参照してください。面接段階の詳細な分析は面接通過率の分析|段階別と面接官別の合否データの見方で扱っています。
目安から外れているときの見方
自社の数字が目安から外れていても、それ自体が「悪い」とは限りません。外れている理由を読み解くことが重要です。
通過率が目安より「低い」とき
| 低い段階 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 書類通過率が低い | 求人と応募者のミスマッチ、要件が伝わっていない |
| 面接通過率が低い | 評価基準が厳しすぎる、面接官の目線がバラバラ |
| 内定承諾率が低い | 競合に負けている、条件面、内定後フォロー不足 |
通過率が目安より「高い」とき
通過率が高すぎる場合も注意が必要です。書類通過率が極端に高い場合、選考が甘く、面接に進む人数が多すぎて工数を圧迫している可能性があります。内定承諾率が極端に高い場合は、そもそも応募者を絞りすぎて母集団が小さい可能性もあります。高いこと自体は良い面もありますが、次の段階とのバランスを見ます。
ボトルネックを特定する
複数の段階で目安から外れている場合、最も改善インパクトが大きい段階から手をつけます。どこが全体の足を引っ張っているかを見つける方法は採用フローを「7ステップ」に分解してボトルネックを見つける方法を参照してください。
通過率を改善する打ち手
書類通過率を上げる
書類通過率が低いのは、多くの場合「求人と応募者のミスマッチ」が原因です。求人票で要件を明確にし、ターゲットに合った応募者を集めることで、通過率は上がります。母集団の質を高める打ち手を優先します。
面接通過率を整える
面接通過率が低い場合、評価基準の見直しが有効です。面接官ごとに合否判断がバラつくと、通過率が不安定になります。評価基準を言語化し、面接官の目線を揃えます。
内定承諾率を上げる
求職者が平均2.3件の内定を持つ以上、内定承諾率は「選ばれる工夫」で決まります。選考スピードを上げて他社より早く内定を出す、内定後のフォローを丁寧にする、条件面の魅力を伝える、といった打ち手が効きます。選考スピードの改善は採用リードタイムの計算と短縮方法|選考日数を数字で管理するを参照してください。
市場環境も踏まえる
通過率は自社の努力だけでなく、市場環境にも左右されます。人材の獲得競争が激しい時期は、通過率が下がりやすくなります。最新の市場動向はマイナビ2026年中途採用調査|採用の「量不足」から「質不足」へのシフトを参照してください。
よくある質問
Q. 応募数が少なくて、通過率を計算しても意味がある数字になりません。
母数が少ないと、1人の合否で通過率が大きく変動するため、単月の数字に一喜一憂するのは避けるべきです。応募が月数件の場合は、3〜6か月分をまとめて計算するのが現実的です。また、通過率よりも「実数」で見る方が分かりやすい場合もあります。「応募10人→書類通過3人→面接2人→内定1人」という実数の流れを追うだけでも、どの段階で人が減っているかは把握できます。母数が小さいうちは、精緻な通過率より、実数の流れと明らかな詰まりを見つけることを優先してください。
Q. 業界や職種で目安が違うなら、この記事の目安は自社に当てはまりますか?
記事の目安は「出発点」として使ってください。正確な自社の基準は、自社の過去データを蓄積することで作られます。まず記事の目安と比べて大きく外れている段階がないかを確認し、そのうえで自社の数字を継続的に記録していくと、半年〜1年で「自社にとっての正常値」が見えてきます。他社との比較はあくまできっかけであり、最終的には自社の推移と比べるのが最も正確です。目安から大きく外れている段階だけ、まず原因を確認するという使い方が実務的です。
Q. スカウトと求人媒体で通過率が違うのですが、まとめて計算していいですか?
チャネルごとに分けて計算することをおすすめします。スカウトは企業から候補者にアプローチするため応募段階の通過率が高く、求人媒体は幅広い応募が集まるため書類通過率が低くなる傾向があります。これらをまとめて計算すると、実態が見えなくなります。チャネル別に通過率を出すと、「どのチャネルが質の高い応募を生んでいるか」が分かり、予算配分の判断にも使えます。手間はかかりますが、チャネル別の通過率は改善の打ち手に直結する重要なデータです。
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