U・Iターン採用の実態|地方中小企業が使える3つの打ち手

U・Iターン採用の実態|地方中小企業が使える3つの打ち手

マイナビが2026年6月に発表した調査で、直近1年間にUターン希望者を採用した企業は31.0%、Iターン希望者を採用した企業は25.8%にのぼることがわかりました。3〜4社に1社が、都市部から地方へ移る人材を実際に採用しているという数字です。地方の中小企業にとって、地元の人材市場だけを見ていると母集団は縮む一方ですが、都市部で経験を積んだ人材が地方を向き始めている今、視野を広げれば採用の選択肢は増えます。この記事では、U・Iターン採用の実態と、地方中小企業がすぐに取れる3つの打ち手を解説します。

この記事でわかること

  • U・Iターン採用の最新データ
  • 都市部人材が地方を向き始めた背景
  • 地方中小企業が使える3つの打ち手
  • 移住支援金の仕組みと活用
  • よくある失敗

U・Iターン採用の最新データ

マイナビ「中途採用・転職活動の定点調査(2026年5月度)」によると、直近1年間のU・Iターン人材の採用実績は次の通りです。詳細はマイナビキャリアリサーチLab「2026年5月度 中途採用・転職活動の定点調査」を参照してください。

項目 数値
Uターン希望者を採用した企業 31.0%
Iターン希望者を採用した企業 25.8%
U・Iターン実施者が最多のエリア 東北
2026年5月の中途採用実施率 44.2%(前年同月比5.2pt増)

用語の整理

  • Uターン:地方出身者が都市部で働いた後、出身地へ戻ること
  • Iターン:都市部出身者が、縁のない地方へ移り住むこと
  • Jターン:地方出身者が都市部を経て、出身地に近い別の地方都市へ移ること

中途採用実施率が前年同月比で5.2pt増と市場全体が活発化するなか、U・Iターンは「地方企業が都市部の人材プールにアクセスする経路」として機能し始めています。

都市部人材が地方を向く背景

都市部で働く人が地方への移住を検討する理由は、単なる「田舎暮らし願望」ではありません。実務的な条件が重なっています。

  • リモートワークの定着:働く場所の制約が緩み、地方でもキャリアを継続できる選択肢が生まれた
  • 住居費と生活コストの差:都市部の家賃・物価の高騰が、地方の可処分所得の相対的な高さを際立たせている
  • 子育て環境:18歳未満の子を帯同する移住には自治体の加算措置があり、教育・保育の環境も判断材料になる
  • 親の介護・実家の事情:Uターンの動機として大きい
  • 移住支援金の存在:条件を満たせば世帯で最大100万円が支給される

重要なのは、これらの動機を持つ人材が「地方の求人を探している」という点です。地方の中小企業が都市部の人材と接点を持てる余地は、以前より確実に広がっています。

地方中小企業が使える3つの打ち手

打ち手①:求人票・採用LPで「移住のハードル」に先回りする

U・Iターン候補者が知りたいのは、仕事内容だけではありません。「住む場所は見つかるか」「家族はなじめるか」「通勤はどうなるか」といった生活の不安が、応募をためらわせます。求人票や採用LPで、次の情報を先回りして出します。

  • 社宅・住宅手当・引越費用補助の有無
  • 自治体の移住支援金の対象求人かどうか
  • 周辺の生活環境(保育園・病院・スーパーまでの距離)
  • 実際にU・Iターンで入社した社員の事例

抽象的な訴求ではなく具体的な数字と事例で伝えることが応募につながります。信頼性の作り方は採用LPの信頼性設計|数字と実績で候補者に伝える方法を参照してください。

打ち手②:オンラインで完結する選考プロセスを用意する

都市部に住む候補者にとって、面接のたびに新幹線や飛行機で往復するのは大きな負担です。この負担が「応募しない理由」になります。1次・2次面接はオンライン、最終面接のみ現地(交通費支給)という設計にするだけで、応募のハードルは大きく下がります。オンライン面接の運営を含む面接全体の組み立ては採用面接の設計方法|質問設計・評価基準・面接官の育て方までを参照してください。

打ち手③:自治体のマッチングサイトに求人を掲載する

移住支援金の対象になるには、多くの自治体で「県のマッチングサイトに移住支援金対象として掲載された求人に就業すること」が要件になっています。裏を返せば、マッチングサイトに求人を出していない企業は、候補者にとって支援金の対象外になります。掲載は無料の場合が多く、移住を検討する層への露出も増えます。チャネル全体の組み方は採用チャネルの選び方|職種・予算・ターゲットで組み合わせを決めるを参照してください。

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移住支援金の仕組みと活用

移住支援金は、東京23区に在住または通勤していた人が東京圏外へ移住し、就業等を行う場合に、都道府県・市町村が共同で支給する制度です。詳細は内閣官房・内閣府「地方創生 移住支援金」を参照してください。

支給額の目安

  • 世帯での移住:100万円以内(都道府県が設定)
  • 単身での移住:60万円以内(都道府県が設定)
  • 18歳未満の子を帯同:1人につき最大100万円を加算(自治体により異なる)

企業側が知っておくべきポイント

候補者が支援金を受け取るには、就業先が「移住支援金の対象求人」である必要があります。一般的な要件として、週20時間以上の無期雇用契約であること、転勤等ではなく新規の雇用であること、3親等以内の親族が経営を担う法人でないこと、などが挙げられます。

つまり、企業がマッチングサイトへの掲載手続きをしていないと、候補者は支援金を受け取れません。「支援金の対象求人です」と求人に明記できること自体が、他社との差になります。

※本記事は2026年7月時点の情報です。要件・支給額・実施の有無は自治体により異なり、予算上限で年度途中に受付を終了する場合もあります。詳細は移住先の都道府県・市町村にご確認ください。

よくある失敗

失敗①:仕事の話だけで、暮らしの話がない

U・Iターンは転職であると同時に「引越し」でもあります。仕事内容と条件だけを並べた求人では、候補者は生活のイメージを持てず応募に至りません。周辺環境・住まい・家族の暮らしまで含めて伝えます。

失敗②:現地面接を前提にして候補者を絞ってしまう

「一度会わないと判断できない」という気持ちは分かりますが、初回から現地面接を求めると、遠方の候補者はそもそも応募しません。オンラインで相互理解を進め、双方が前向きになった段階で現地に来てもらう順番にします。

失敗③:入社後のフォローがなく早期離職する

移住してきた社員は、職場だけでなく生活のすべてが新しくなります。社内に知り合いがいないうえ、地域にも知人がいない状態です。入社後のオンボーディングで、業務の立ち上がりだけでなく地域とのつながりづくりまで支援すると定着率が変わります。詳しくは入社後3か月の定着設計|オンボーディング実務を参照してください。