
求人票を作ろうとして手が止まるとき、多くの場合は「文章の書き方」ではなく、採用要件(誰に、何を任せ、何を約束するか)が決まっていないことが原因です。
本記事では、1職種につき1枚で採用要件を整理する「採用要件定義シート」の作り方を解説します。
この記事のゴールは、シートを完成させたあとに求人媒体・採用LP・面接のメッセージが一貫し、応募導線を組み立てられる状態にすることです。
- 採用要件定義シートに入れるべき項目(1職種1枚の型)
- 60分で埋め切るための手順と、迷ったときの判断ルール
- 「盛りすぎ」「曖昧」「媒体とLPで矛盾」を防ぐチェック方法
- 完成したシートを、求人媒体・採用LP・面接に転用する具体手順
- 公開後もブレずに更新できる、運用メモの残し方
採用要件が曖昧だと起きる“4つの事故”
採用要件が曖昧なまま、媒体や採用LPを作り始めると、現場では次の4つが起きがちです。
どれも「文章が下手だった」ではなく、前提が決まっていなかったことが原因です。
- 事故①:媒体と採用LPで言っていることが変わる
媒体は「働き方」を推しているのに、採用LPは「成長環境」を推す、といったズレが発生します。 - 事故②:必須要件が増えすぎて、応募が止まる
「理想像」を積み上げた結果、該当者がほぼいない要件になります。 - 事故③:入社後に“想定と違う”が起きる
任せたい役割が曖昧で、候補者にも現場にもズレが残ります。 - 事故④:面接官ごとに説明がバラつく
聞くべきポイント・伝えるべき現実が揃わず、候補者側の不信感につながります。
これを避けるために必要なのが、採用活動の「設計図」になる採用要件定義シートです。
重要なのは分厚い資料を作ることではなく、判断が必要な箇所だけを1枚に固定することです。

採用要件定義シート(1職種1枚)の全体像
まず結論から。1枚に収めるなら、項目はこの8つで十分です。
この順番で埋めると、迷いが減ります。

シートに入れる8項目(1職種1枚)
- 1. 役割:この職種に任せたいこと(1〜2行)
- 2. 仕事内容:主要タスク3〜5(補足は別枠)
- 3. 成果の定義:入社後の期待状態(例:3ヶ月後にこうなっていてほしい)
- 4. 必須要件:できないと困る条件(2〜4個)
- 5. 歓迎要件:あると強い/伸ばせる(2〜4個)
- 6. 魅力:候補者に約束できる価値(事実ベースで3つ)
- 7. 勤務条件:働き方・時間・報酬など(言い切れる事実)
- 8. 選考プロセス:回数・内容・連絡目安(不安を減らす)
ここでのポイントは、「細かく書く」よりも矛盾がないことです。
要件が決まれば、媒体や採用LPは“表現を整える作業”になります。
作成前に揃える情報(15分でOK)
シート作成は、ゼロから考えるよりも、先に「事実」を集めておく方が早いです。
ここだけ15分で揃えると、60分で書き切りやすくなります。
準備しておくもの
- 現場責任者への確認(任せたい役割/今困っていること/期待する成果)
- 既存メンバーの業務(今、誰が何を抱えているか)
- 必ず守る条件(勤務時間・勤務地・報酬レンジなど)
- 選考の現実(面接できる回数、連絡にかけられる日数の上限)
さらに楽になるのが、メモを「事実/希望/検討中」の3つに分けることです。
事実=必ず言い切れる、希望=できれば、検討中=まだ決めていない。これを区別すると、採用LPで過剰な断定を避けられます。

60分で埋める手順(7ステップ)
ここから実際の手順です。迷いが出やすい箇所には、判断ルールも添えています。
目安時間をつけているので、タイマーをかけて進めるのがおすすめです。
ステップ1(10分)|役割を1〜2行で固定する
役割は、採用全体の“ブレ止め”です。この職種に任せたいことを1〜2行で言い切ります。
判断ルール:「この職種が入っていないと、何が回らないか?」から逆算します。
- 例:受注後の運用を安定させるために、日々の進行管理と関係者調整を担う
- 例:バックオフィス業務の滞留を減らすために、請求〜入金の流れを整える
ステップ2(10分)|仕事内容は“主要3〜5タスク”に絞る
仕事内容を盛るほど、候補者は「結局何の仕事?」になります。まずは主要タスクだけに絞ります。
判断ルール:「毎週発生するもの」「成果に直結するもの」を優先し、たまに発生する業務は補足へ回します。
- 主要タスク(例):問い合わせ対応/進行管理/データ更新/関係者連絡
- 補足(例):イベント時の臨時対応/マニュアル整備 など
ステップ3(10分)|成果の定義を“3ヶ月後”で書く
成果の定義があると、「何ができれば良い人か」が一気に明確になります。
判断ルール:抽象的な言葉(主体性、コミュニケーション)ではなく、状態で書きます。
- 例:主要タスクを一人で回し、週次の進捗共有ができる
- 例:運用ルールに沿って処理でき、滞留が一定以下に収まっている
ステップ4(10分)|必須要件は“できないと困る”だけ
必須要件は少ないほど強いです。
判断ルール:「入社後1〜2ヶ月で、ここができないと業務が止まるか?」でYesのものだけ残します。
- 例:Excel/スプレッドシートで基本的な集計ができる
- 例:社内外との業務連絡を滞りなく行える
- 例:期限と優先度を守ってタスクを処理できる
ステップ5(5分)|歓迎要件は“あると伸びる”を置く
歓迎要件は、候補者が「自分にも勝ち筋がある」と感じる材料にもなります。
判断ルール:必須に入れるほどではないが、あると立ち上がりが早いものを置きます。
- 例:業務ツール(Chat/CRM/タスク管理)を使った運用経験
- 例:業務改善の提案やルール作りの経験
ステップ6(10分)|魅力は“約束できる事実”で3つ書く
魅力は、理想や雰囲気ではなく事実で書くほど強くなります。
判断ルール:「面接で質問されたら、具体で答えられるか?」でチェックします。
- 例:任せる範囲(どこまで裁量があるか)と、レビューの頻度
- 例:働き方の実態(残業の目安、繁忙期の特徴)
- 例:身につく経験(どんな業務ができるようになるか)
ステップ7(5分)|勤務条件と選考プロセスを“不安が減る書き方”にする
候補者側が一番不安になるのは、「応募後どうなるか分からない」ことです。
判断ルール:言える範囲でいいので、回数・内容・連絡目安だけは書きます。
- 選考(例):書類→面接1回→条件確認→内定、結果連絡は◯営業日以内
- 連絡(例):応募から◯日以内に連絡、面接後は◯日以内に結果

仕上げのチェックリスト(合格ライン)
最後に、ここだけは確認してください。ここを通れば、媒体・採用LP・面接に展開してもブレにくくなります。
- 役割が1〜2行で言い切れている
- 主要タスクが3〜5に収まっている(盛りすぎていない)
- 成果の定義が状態で書けている(抽象語だけになっていない)
- 必須要件が2〜4に収まっている(理想像が混ざっていない)
- 歓迎要件が「あると強い」に留まっている(必須の代替になっていない)
- 魅力が事実ベースで3つ書けている(曖昧な表現だけで終わっていない)
- 勤務条件が“言い切れる範囲”で整理できている(検討中は検討中として扱う)
- 選考に回数・内容・連絡目安が入っている
- 媒体用に短くしても要件が崩れない(短縮版が作れる)
- 面接で聞くべきことが要件から導ける(確認項目が自然に出てくる)
合格ラインは、「この1枚を見れば、社内の誰が読んでも同じ説明ができる」状態です。
完璧に埋めるより、矛盾がないことを優先してください。
シートをそのまま媒体・採用LP・面接に展開する方法
採用要件定義シートができたら、次は“表現へ変換”します。
ここでは、媒体・採用LP・面接に見立てて、どう落とすかを具体で説明します。
① 求人媒体(短い文字数)への変換ルール
媒体は文字数が限られるため、すべてを伝えるのではなく「入口として何を約束するか」を決めます。
型: 役割(職種)+一番の魅力(事実)+働き方(事実)
例)
「(職種)〇〇担当|(魅力)△△の裁量あり|(働き方)□□(例:残業目安/在宅可など)」
② 採用LP(1画面目)への変換ルール
採用LPの最初の1画面目は、媒体で約束した内容を言い換えずに受けるのが基本です。
ここで言っていることが変わると、候補者は違和感を持ちます。
- H1:媒体の要点をそのまま
- リード:役割と主要タスクの要点を短く(3行程度)
- 安心材料:勤務条件・選考の“目安”を一部出す
③ FAQ(不安を先回りして潰す)への変換ルール
FAQは「よくある質問を書いておく場所」ではなく、応募前の不安を減らすための装置です。
作り方はシンプルで、要件定義シートの中で候補者が引っかかりそうな箇所をそのまま質問化します。
- 勤務条件(時間・勤務地・残業目安)→「残業はどれくらいですか?」
- 成果の定義→「入社後、最初に期待されることは?」
- 必須要件→「未経験でも応募できますか?」(できる/できないを曖昧にしない)
- 選考→「選考フローと連絡目安は?」
④ 面接(確認するべきポイント)への変換ルール
面接の質問は、センスではなく要件から引けばブレません。
必須要件1つにつき、確認質問を1つ作るだけで、採用の再現性が上がります。
- 必須要件:期限を守れる → 確認質問:「締切が重なったとき、どう優先順位を決めましたか?」
- 必須要件:業務連絡ができる → 確認質問:「認識違いが起きた経験と、どう防いだか?」
補足として、採用LPの「ファーストビュー」「応募フォーム」「FAQ+安心表記」の作り方は別記事でも扱っています。
ただ、この記事の内容だけでも、要件から各パーツへ落とし込めるはずです。
よくあるNGと修正のコツ
NG1|仕事内容が多すぎて“何の仕事か分からない”
主要タスクが5を超える場合は、まず削ります。削れないなら、役割が曖昧です。
修正のコツ:「成果の定義」から逆算して、成果に直結するものだけ残します。
NG2|必須要件に“理想像”が混ざっている
「主体性」「コミュ力」など抽象語が必須に入ると、判断がぶれます。
修正のコツ:抽象語は消して、行動に置き換えます(例:関係者に期限を伝え、滞留を出さない)。
NG3|魅力が“雰囲気”で終わっている
「アットホーム」「風通しが良い」だけだと、候補者は判断できません。
修正のコツ:事実に落とします(例:週1の振り返り、レビュー頻度、任せる範囲、繁忙期の特徴)。
NG4|勤務条件・選考が曖昧で不安が残る
「応相談」「随時連絡」だけだと不安が残ります。
修正のコツ:言い切れない部分は「検討中」と明記し、言える範囲で目安を出します。
よくある質問(FAQ)
Q1. どの職種から作るのがいいですか?
「採用が急いでいる職種」か「応募があるのに決まりにくい職種」からがおすすめです。
1職種で型ができると、他職種への横展開が速くなります。
Q2. 60分で埋まらない場合はどうすれば?
まずは役割・主要タスク・魅力(事実)の3点だけを確定させてください。
必須/歓迎は後から調整できますが、3点が決まると媒体・採用LPの骨格が作れます。
Q3. 給与や働き方がまだ決まっていない場合は?
決まっていないものは「検討中」として扱い、言い切れる範囲だけを記載します。
無理に断定すると、後で採用LPや面接で矛盾が出ます。