採用活動には媒体費・人材紹介手数料・研修費用など、多くのコストがかかります。しかし、要件を満たせば国の雇用関係助成金を活用してコストの一部を補填できることを知らないまま採用を進めている企業は少なくありません。助成金は補助金と異なり採択制ではなく、要件を満たせば原則として支給されます。この記事では2026年時点で中小企業が採用に活用できる主要な助成金と、活用時の注意点を整理します。
- 補助金と助成金の違いと採用への活用イメージ
- 採用に使える主要助成金4種の概要と支給額
- 2026年度の主な変更点
- 助成金を受給するための共通要件
- 中小企業が今から動くべき優先順位
補助金と助成金の違い
雇用に関する公的支援には「補助金」と「助成金」の2種類があります。採用担当者が混同しやすい部分なので、まず整理します。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 受給方式 | 採択制(申請しても不採択になる場合あり) | 要件充足型(要件を満たせば原則支給) |
| 主な財源 | 税金(経済産業省・中小企業庁など) | 雇用保険料(厚生労働省) |
| 申請書類 | 事業計画書が必要なことが多い | 計画書不要・雇用実績をもとに申請 |
| 支給タイミング | 採択後・事業完了後 | 雇用・制度整備の実施後に申請 |
採用活動に直接活用しやすいのは厚生労働省が管轄する「雇用関係助成金」です。厚生労働省の雇用関係助成金一覧には採用・雇用維持・職場環境整備など多くの制度が掲載されており、中小企業でも申請できるものが多くあります。

補助金は採択制・助成金は要件充足型。採用コスト軽減には助成金の方が使いやすい
採用に活用できる主要助成金4種
① キャリアアップ助成金(正社員化コース)
パート・アルバイト・契約社員など有期雇用の従業員を正社員に転換した場合に支給される助成金です。採用コストというより「非正規採用→正社員化」の動線で活用します。中途採用をいったん有期雇用で行い、正社員転換とセットで申請するケースが多い制度です。
| 転換の種類 | 中小企業の助成額(1人あたり) |
|---|---|
| 有期雇用 → 正規雇用 | 40万円 |
| 無期雇用 → 正規雇用 | 20万円 |
詳細は厚生労働省のキャリアアップ助成金ページを参照してください。
② トライアル雇用助成金
職業経験の不足や長期離職などにより就職が困難な求職者を、ハローワーク等の紹介により原則3か月間の試行雇用(トライアル雇用)を実施した場合に支給されます。採用前に適性・スキルを見極めながら、その期間の人件費の一部を補填できる仕組みです。
支給額(一般トライアルコース)
対象者1人あたり月額最大4万円(母子・父子家庭の親の場合は月額最大5万円)×最長3か月
※ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介が必要
③ 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高齢者・障害者・母子家庭の母など、就職が困難な方をハローワーク等の紹介で雇用した場合に支給される助成金です。該当する属性の方を採用する場合は必ず確認すべき制度です。
| 対象者 | 中小企業の助成額(概算) |
|---|---|
| 60歳以上の高年齢者(正社員) | 最大60万円(1年分) |
| 母子・父子家庭の親 | 最大60万円(1年分) |
| 障害者(身体・知的) | 最大240万円(2年分) |
詳細は厚生労働省の特定求職者雇用開発助成金ページを参照してください。
④ 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
評価・賃金制度・諸手当・人事評価制度などの雇用管理制度を整備して従業員の離職率を下げた事業主に支給される助成金です。直接的な採用費補填ではありませんが、採用した人材の定着率改善が主目的の制度です。離職率を改善することで翌年の採用コスト削減につながります。
支給額
制度整備の目標達成(離職率の改善)を条件に57万円
※制度の種類・達成状況により異なる。詳細は各都道府県労働局に確認
🔧 助成金活用を含む採用オペレーション整備はLoopOpsへ。
2026年度の主な変更点
雇用関係助成金は年度ごとに内容が変更されます。2026年度(令和8年度)の主な変更点は以下の通りです。
| 制度 | 主な変更点 |
|---|---|
| キャリアアップ助成金 | 「社会保険適用時処遇改善コース」が2026年3月末で暫定措置終了。代わりに「短時間労働者労働時間延長支援コース」(2025年7月新設)に引き継ぎ |
| 特定求職者雇用開発助成金 | 「成長分野等人材確保・育成コース」が2026年4月で廃止。代替として特定就職困難者コース・人材開発支援助成金を活用 |
| 産業雇用安定助成金等 | 2026年度中に改正予定。全体として「賃上げ×リスキリング」を軸に制度が拡充される方針 |
| トライアル雇用助成金 | 支給対象となる労働者の年齢上限が60歳未満に見直し。「生産性要件」が完全廃止 |
廃止・終了した制度に気づかずに申請準備を進めると無駄な手間が生じます。申請前には必ず厚生労働省の最新の雇用関係助成金一覧で現行の制度を確認してください。

採用目的別に使える助成金は異なる。まず「どんな採用をするか」を整理してから制度を選ぶ
助成金受給の共通要件と注意点
個別の助成金ごとに要件は異なりますが、雇用関係助成金に共通する前提条件があります。申請前に必ず確認してください。
共通の前提要件
- 雇用保険の適用事業所であること:雇用保険に加入していない事業所は申請不可
- 労働保険料に滞納がないこと:滞納がある場合は事前に完済が必要
- 過去1年以内に労働関係法令違反で送検されていないこと:指導は対象外だが送検歴があると不可
- 申請期限を守ること:各助成金には申請期限があり、期限を過ぎると受給不可
よくある失敗パターン
| 失敗パターン | 対策 |
|---|---|
| 雇用してから助成金の存在を知る | 多くの助成金は「雇用前にハローワークへの申請」が必要。採用計画段階で確認する |
| 就業規則が整備されていない | キャリアアップ助成金等は就業規則の整備が前提要件。事前に確認・整備する |
| 廃止された制度で申請しようとする | 年度変わりの4月前後に制度変更が集中する。申請前に最新情報を確認する |
| 複数の助成金を同時申請して要件が競合する | 複数申請時は社労士に相談して併用可否を確認する |
助成金申請の代行は社会保険労務士(社労士)が行えます。就業規則の作成・変更も社労士の業務のため、制度整備と申請をまとめて依頼することで手間が大幅に省けます。
中小企業が今から動くべき優先順位
ステップ1:自社の採用計画と照らし合わせる
「どんな人を・いつ・どのような雇用形態で採るか」が決まると、使える助成金が絞り込まれます。まず採用計画を整理した上で、該当しそうな制度を確認します。
ステップ2:ハローワーク担当窓口に相談する
雇用関係助成金の多くはハローワーク経由の採用が条件です。採用計画段階でハローワークの助成金担当窓口に相談することで、どの制度が使えるかを無料で確認できます。全国のハローワーク所在地は厚生労働省のページで確認できます。
ステップ3:就業規則・雇用管理制度を整備する
助成金の多くは就業規則の整備が前提要件です。申請を急ぎたい場合は、社労士に依頼して就業規則の整備と助成金申請を並行して進めることが最も効率的です。
💡 助成金活用と並行して採用LPを整備して直接応募を増やすにはHirePageへ。
よくある質問
Q. 助成金を受け取るまでにどのくらい時間がかかりますか?
制度によって異なりますが、申請から支給まで2〜6か月程度かかることが一般的です。また多くの助成金は「先払い」ではなく「後払い」のため、採用・制度整備を実施してから申請・審査・支給という流れになります。キャッシュフローの計画に注意が必要です。
Q. 人材紹介会社から採用した場合でも助成金は使えますか?
制度によります。ハローワーク等経由が必須の助成金(トライアル雇用助成金など)は、人材紹介会社経由では対象外になるケースがあります。一方、キャリアアップ助成金(正社員化コース)は採用チャネルを問わず、雇用後の転換実績が要件のため人材紹介経由でも申請可能です。事前に制度の要件を確認することが重要です。
Q. 助成金の申請は自社でできますか?社労士に頼む必要がありますか?
原則として自社で申請できます。しかし、就業規則の整備・雇用契約書の確認・申請書類の準備など多くの手順があり、採用担当者の工数が大きくなります。また書類の不備があると受給が遅れる・不支給になるリスクもあるため、初めての申請は社労士に依頼する方が確実です。助成金の支給額が社労士費用を上回るケースがほとんどです。
採用助成金の活用についてご相談がある方は、まずは下からご連絡ください。
※本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。助成金の制度内容は年度ごとに変更されるため、申請前に必ず厚生労働省の公式サイトまたは管轄のハローワークでご確認ください。